2009年6月20日土曜日

《裁判》被告の返答が如何に不誠実で根拠がないかを表明した「準備書面」

第七回公判の数日前に出した、書面。

 当初のマンション販売パンフレットに、性能評価取得項目として『音環境』が記載されていた新たな追求や、原告の質問書に対する被告のあまりに内容の乏しい返答書への不満と、反論。

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準備書面


1.本件マンションの販売方法と騒音対策

(1)被告は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能評価」につき、音環境を評価・表示項目から除外して性能評価を受けている。
 ところで、上記「性能評価」とは、 ~ それだけに音環境を除外して性能評価の申請をすることは企業の姿勢として仕方がないのかもしれない。
 ところが、そこまで性能評価の審査が難しい音環境につき、逆に性能評価を実際に受けた物件ということになれば、~ 物件を購入する一般人からすれば音環境については申し分がない物件という確信を得る ~それが、当該物件の価値を高めることは当然である。
 となれば、これも逆に万が一、販売時にその点において虚偽の事実を述べて販売をしたというようなことがあれば、即ち、音環境に関する性能評価を受けていないにも拘らずこれを受けたと説明しながら物件を販売したとなれば、その行為は悪質極まりないものである。それが消費者契約法違反することは勿論、詐欺の欺罔行為として購入者を錯誤に陥らせ、契約意思に多大な影響を及ぼしたのであるから、それにより契約が取り消されなければならないことは当然である。
 ~ 被告はなんとこの音環境について、本件マンションを販売する際に配布したチラシに「【住宅性能表示制度】による「住宅性能評価書」を取得しています。」として、「8.音環境」を除外することなく列記していたのである。 ~ 明らかに虚偽記載であり、 ~ 評価の信頼性を高めるセールストークをしているのである。被告が消費者を偽り本件マンションを販売していたことは歴然としており、本件では正にその音環境が直接問題となっているのであるから、被告の行為には断じて許されないものがある。
 そしてかたや原告は、静かな住宅を探していたところ、チラシにより本件マンションに関しては性能評価を受けている物件であると認識しながら、ただ本件居室の下に駐車場があることがやはり心配で、営業担当者に駐車場若しくは駐車機から発生する音の可能性につき率直な質問をしていたのである。それを被告は、 ~ 原告から質問がなかったと平然と嘯く主張をしているのである。その主張自体が本件状況を考えれば常識的に考えられない主張である ~ 取得していない音環境の性能評価を取得しているという虚偽のチラシを平然と配布することにより入居者と契約を締結しておきながら、裁判になれば逆に音環境に関する性能評価を得ていないことを本件において自分たちに有利な事情として主張するのであるから、契約時における交渉ごとに関する被告の主張にあっては何一つ信用ができないものである。

(2)被告は、音の対策としては、駐車機メーカーの指導を得ながら、同社の仕様どおりに多少の配慮をしたようであるが、「それら配慮により、本件居室において、日常生活上支障となる音・振動は生じないものと予想していた」と主張するとおり、それ以上に被告自らが、~対策を検討するといった作業は何もしていなかったようである(そのために被告は、原告が求めた釈明事項に関して殆ど直接的な回答をしなかった)全ては駐車機メーカーを信頼して ~ 、独自の調査・判断を何もしないまま、即ち本件駐車機をめぐる音環境に関する調査・確認をしないまま本件居室を販売したことにあっては、余りにも無責任な対応であり、それでいて音環境についてまで性能評価を受けていたと宣伝していたことに関しては、ただ呆れるばかりである(原告は”被告の釈明を求める「準備書面」”を弾劾証拠的に考えていたので、被告が音環境につき性能評価を得ていたと虚偽の記載をしたチラシを配布していたことに関しては、原告の陳述書では若干触れたが、被告が音環境に対し、特に本件駐車機から発生する騒音の有無に関し如何に説明しながら本件マンションを販売したかという、被告の音環境に対する認識と販売方法における釈明を待ってから主張をするつもりであった。しかし被告には釈明の対象となる行為自体を何もしておらず、ここまで被告が無責任に考えていたなら敢えて釈明を待つ必要もなかったようにも思われる。)。
 仮に駐車機メーカーの指導で、本件駐車機の支柱を受ける部分の基礎を大きくし、ピットのスラブ厚を厚くし、大きな地中梁に緊結するとしても、それにより本件居室に騒音・振動が伝わらないことになるのかということに関し、検査等をしないまま本件居室を原告に販売し、それで本件騒音により原告ら家族に今日まで苦難を強いたことにあっては、無責任極まりないものがある。

2.受忍限度の鑑定

本件騒音が原告ら家族にとって受忍限度を超える耐えられない騒音であることにあっては、これまで主張しており、 ~ 完全に本件騒音は目覚まし時計となっている。
 被告は、間欠音であるから問題となるような騒音ではないかのような主張をしているが、就寝中である夜中や早朝という暗騒音時に突然発生する騒音であれば、その音に体が慣れるということから考えられず、同じ音量の音でも昼間常時聞こえてくる音の方が余程我慢ができるというものである。今日、同じ音量であっても連続音より断続音の方が大きく聞こえること、また衝撃的な音として不快感を募らせる音であることは一般的に述べられていることであり、被告の主張は単に音が聞こえる時間の対比から騒音としての程度が低いかのように主張しているが、間欠音であるからという理由で受忍限度の範囲内であるということはなく、特に本件騒音では時間の長さが問題となるのではなく、何時如何なる状況で発生する騒音かということを何よりも検討を要するものである
 そして間欠音が故に騒音として低く評価されるのは、その音の原因が外部にあったり、偶発的な音が多く、それが想定外の音であることから責任問題とならない場合が多く考えられ、本件は居室の下に駐車機を設置するというマンションの構造自体が原因となって発生している音であるから、騒音自体が想定内にあり、また24時間利用できる駐車場である限り就寝時に発生することにつき確実性をもった音である。間欠音であること自体は、被告の言い逃れにもならないものである
 被告は、エントランスとかエレベーターとかいった共用設備に関して入念な騒音対策を講じたことを誇らしげに主張しているが、それは正に共用設備から聞こえる騒音というものがあってはならない種類の音だからである。そもそも受忍限度にある音か否かは、基本的に通常の生活に伴う音として住民が我慢しなければならないか否かが問題となるところ、マンションでは一棟の建物に多くの入居者が共同生活を行うことから、住民相互の生活音の発生は不可避であり、それをどの程度まで防ぐことができる構造になっているかという観点から当該建物の騒音対策が講じられるものである。しかし共用設備から発せられる騒音に関しては、生活音と異なり建築時において最初から音の発生を防ぐことができる種類の音であるから、業者としては最初から騒音が発生しないように建物を建築する義務があり、その義務を履行して初めて売物にすることができるものである。然らばこそ、被告もエントランス、エレベーターでは細心の注意を払ったのであろうが、本件駐車機も共用設備ということからは何ら差異はないものである。それを被告は勝手に被告の社内の基準では40デシベルまでが許容範囲であるかのような主張をするが、それは入居者同士の生活音とか外部から発生する音に関する許容範囲の問題であり、共用設備から発生する騒音問題においては何ら基準にならず(勿論、40デシベル自体、事前に説明を受けたことはなく、その数値自体承認できないが)、共用設備においては何らかの音が聞こえること自体に問題があり、それを入居者が受忍しなければならない義務自体が元々ない種類の音である。
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 従って、本件受忍限度を鑑定する場合の鑑定においても(本来、音が発生すること自体が問題であり、受忍限度は関係ないともいえるが)、単に騒音の数値だけでなく、原告らの生活状況、即ち、毎早朝の暗騒音時に就寝中の者を起こす音であるということと、共用設備から発生する音に対する受忍義務であるということを十分に考慮した鑑定が必要である。


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